たしかに、上気道炎症状の疾患のなかに、細菌性のものが含まれる可能性はわずかながらありますが、一律に抗生物質を与えて客観的な効果がみられたという、しっかりした調査はありません。
抗生物質の副作用は無視できず、重篤なアレルギー症状や下痢は小児科臨床でよく遭遇しますし、MRSAなど耐性菌を生み出す原因になります。
ほとんどの上気道炎はウイルス性で、1週間から10日以内に自然に治癒するため、症状が長引いたときなどに抗生物質が処方されると、自然治癒時期と重なり、劇的に聞いたような錯覚がおこります。
ただし、明らかな耳痛・肺炎の兆候・溶連菌による咽頭炎などが見られる場合は、アメリカでも抗生物質の適応となります。
抗生物質を否定するわけではありませんが、日本の小児科診療において、上気道炎に対して、抗生物質が濫用されているのは、あきらかです。
ほとんどの上気道炎において、咳・鼻水症状と微熱以外に、はっきりとした症状がなくて、全身状態がよければ、何もせずに自宅で栄養と休養だけで、3−4日経過を観察するのが、いちばんです。
発熱が5日目になったり、38.5度以上の高熱が48時間以上続くとき、喉の痛みが主要症状のとき、息苦しさや胸の痛みを訴えるとき、はっきりとした耳の痛みが半日以上続くとき、あきらかにぐったりとしているときは、小児科を受診しましょう。